またも恐竜の概念に一石を投じるような、予想外の大発見の報告がもたらされた。
それは貴重な宝石の中に眠っていた、小さな恐竜の存在だった。
史上最小の恐竜
今回の主役は「オクルデントアビス」。
名前の意味は「目と歯の鳥」。
鳥類の系統に属していたとされ、9900万年前の白亜紀に生存し、その小ささから「史上最小の恐竜」の可能性が高い、鳥のような小型新種恐竜である。
化石は琥珀内部の頭蓋骨しかないが、そこから推定された全長は4~6㎝、体重はわずか2gしかなかったとされる。
体長は現代の最小の鳥「マメハチドリ」と同程度で、1円玉2枚分の重さしかなかった。
2016年にミャンマーの北部の鉱山で採集された、約9900万年前のものと思われる「琥珀」の中に、2㎝にも満たないわずか7mmのごく小さい頭蓋骨が入ったものが見つかり、新種と認定され存在が公になった。
頭蓋はクチバシを含んでも1㎝程度にしかならない、小さすぎるものだった。
超小型のハンター
CTスキャンによって、頭蓋を調べると恐竜には見られない特徴が詰まっていたという。
非常に小柄だが、その生態は獰猛なものであったと推測されている。
クチバシの先端から最深部までには、100本もの鋭く細かい歯が並んでおり、歯の位置からかなり大きく口を開くこともできたという。
この歯は明らかな捕食性を物語り、小さな昆虫や無脊椎動物を専門に捕食する、かなりのハンターであったことが示唆されている。
この歯は、クチバシ部から直に生えていたものだという。
また頭蓋には強膜輪という眼球を保護する骨があり、そこには大きな眼球が付いていた。
しかし、オクルデントアビスの目の瞳孔は極めて小さく、視力は思う以上に低く、側面を見られても立体視はできなかったとされている。
光もあまり受け付けず、このことから昼間に活動する昼行性で、夜間は身を潜め敵から身を守っていたという。
この目の特徴は爬虫類に近く、鳥類は持っておらず、全く新しい鳥の系統を明らかにしたと言われている。
生息していた当時のミャンマーは孤島になっており、適応の結果オクルデントアビスは小柄になっていったとされる。
恐竜であり鳥でもある
恐竜か鳥かは、少々区別しづらいとされ、頭蓋骨は鳥類と恐竜の一部にしか見られない形状があり、だが鳥類と明確に判別できる特徴がなく、恐竜かもしくは別の種の生物であると考えられている。
その見た目から恐竜か鳥類か曖昧に思えるが、近年の学説では「鳥類は系統学では恐竜に含まれる」という見解が主流になっており、
オクルデントアビスも鳥類にない特徴を持っている点を鑑みて、恐竜といっても矛盾はないのだ。
つまりオクルデントアビスは、「鳥でもあり恐竜でもある」まさに奇跡的な恐竜だということである。
最初に化石を発見した学者も、興奮を隠せず「圧倒された」とのコメントを残している。
この発見により、鳥類がジュラ紀に現れてから、これまでの見解よりもはるかに早くから小型化を進めていたことを証明したという。
これだけの議論を呼ぶ新種というのも例がなく、恐竜の世界を広めるのに一役買ってくれた新種恐竜だった。
オクルデントアビスは恐竜であり鳥なのだ。